犬のブログ

狂犬病予防接種について

狂犬病ワクチンも他の混合ワクチンも、病気から犬を守る為という同じ目的を持ったワクチンという共通カテゴリーに属します。

しかし、狂犬病ワクチンと混合ワクチンの決定的な違いは何でしょうか?それは法律で接種が義務付けられているのか、いないのかという点だと思います。

狂犬病ワクチンは、狂犬病予防法という法律に則って、飼い主の方に飼い犬に予防注射接種と飼い犬の登録を義務として課しています。

しかも、我々獣医師の管理監督官庁は、通常、農林水産省ですが、狂犬病予防注射に限って言えば、厚生労働省です。

なぜ、狂犬病予防注射が厚生労働省の管轄下にあるのかというと、人間を狂犬病の脅威及び、被害から守る為なのです。

人間に狂犬病の予防注射をしてもなかなか免疫ができにくい(一ヶ月おきに最低三回の接種が必要。)ことと、犬が狂犬病ウィルスに対して高感受性動物(羅りやすいし、予防注射により免疫もできやすい種)なので、防疫の目的においては犬に予防注射をした方が効率がよく、感染防御しやすいという事実を元に行われています。

「犬の健康のためではなく、狂犬病による人の健康被害を出さないため」という理由から厚生労働省より獣医師が狂犬病の予防接種を委託されているのです。

特定の病気のリスクが非常に少ない国のことを清浄国(または地域)と言いますが、狂犬病の清浄国または清浄地域と認められているのは、この世界に多くの国が存在する中、わずかに13の国と地域だけです。

日本、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、マレーシア、アイスランド、ハワイ、グアム、フィジーなどです。(状況によって変わることがあるので、清浄国および地域だとしても渡航などをされる場合は、再度、ご自身でご確認されることをおすすめします。)

上記以外の国や地域では、毎年のように狂犬病の被害者が出ています。但し、発生している国によって、感染源が犬以外の動物であることがありますので注意が必要です。

狂犬病の発生の無くなった国で、常に提起される議論として、「狂犬病の発生がみられないのだから狂犬病の予防注射を廃止しよう」ということがあります。

しかし、その為には、空港および港において、動物の輸出入の際に更なる検疫の強化が、必要になるでしょう。

これらは簡単には進めることの出来ないことですから、防疫のために有効な手段の一つである、犬への狂犬病予防接種は欠かせないものだと考えます。

日本が狂犬病の無い国になれたのは、これまでに犠牲となった動物や、任務中に不幸にも狂犬病の被害に遭われた方達の犠牲という多大な代償を払った上で勝ち得たということを我々は決して忘れてはならないと考えます。