このブログでは病院の様子をお伝えしていきますが、今回は症例のお話をしてみようと思います。解剖学的用語も出てくるので、ちょっとお堅い話ですみません。
本院ホームページ猫のブログ記事で、猫のくしゃみの話をしました。その文章の後半に、呼吸をするときにイビキのような音がする場合、鼻の奥に異物や腫瘤のある可能性があると書きました。
今回はそれが腫瘍であったという、稀ではあるけれどちょっと怖い症例について、診断に至るまでの過程を動画と写真を交えて紹介します。
飼い主さんは猫のかぜだと思い来院されました。くしゃみ、鼻水などの鼻炎の症状は目立たなかったため、口の中を覗いてみました。
あれ!? 上あごの奥の方が腫れて見えるぞ。
次はX線検査で調べてみよう。
ここまでで咽頭鼻部という所に何か腫瘤があることがわかります。怪しいところが見つかりましたが、この先の検査は全身麻酔が必要です。思いを決して麻酔をかけて検査をしてみることになりました。
より鮮明に病変部が分りました。病変部を触ると消しゴムのような硬さで、軟口蓋の裏側に広範囲に広がっており、完全切除できるようなものではありませんでした。
異物であれば取り除くことで治せるのですが・・・
診断に近づけるために、腫れたところに針を刺して検査をしました。その結果、「上皮性悪性腫瘍」と診断されました。ここまでやってはじめて腫瘍性疾患であることが判明しました。
こんな事もあるんですね。
いつも何気なく聞いている呼吸音も、少し変だなと思ったら、病院に相談してみて下さい。
<略歴>
1990年 岩手大学 卒
同年 東京大学獣医外科学教室 研究生
1992年 戸ヶ崎動物病院 勤務
2018年 本牧通り動物病院 院長着任
<所属学会・研究会>
日本獣医麻酔外科学会
日本獣医がん学会
獣医神経病学会
日本獣医顎顔面口腔外科研究会
どうぶつ達との生活を含めた家族第一主義
学生時代にスキー、温泉、日本酒に目覚め現在に至る
モットーは人の気持ちを想うこと