ねこのブログ

【猫のくしゃみ】病気かどうかの見分け方や原因を獣医師が解説


飼い猫がくしゃみを頻繁にしていると、もしかしたら病気じゃないか? と気になることもありますよね。
 

猫のくしゃみは寒いから出るわけではなく、放置しても大丈夫な場合とそうでない場合があります。
 

まきの
まきの
その見分け方や対処法などを、横浜市中区本牧通り動物病院で院長をしている私、牧野が解説します。

 

猫のくしゃみは生理現象のものと病気によるものがあります


猫がくしゃみをしているとき、それが生理現象によるものであれば心配ありませんが、病気の可能性もあるため注意が必要です。
 

生理現象によるくしゃみ

人間と同じように何かが鼻に入ってむずむずしたときに出るものです。ほこりや煙などの異物を鼻から排出しようとするために起こります。
 

病気の可能性があるくしゃみ

細菌やウイルスの影響でくしゃみが出ることがあります。次のような症状があれば病気の可能性があります。
 

  • くしゃみが長引いている(1日中/数日続いている)
  • 鼻水が出ている(黄色~緑色の鼻水)
  • 鼻血が出ている(赤・ピンクがかった鼻水)
  • 目やに・涙が出ている
  • 食欲が落ちている
  • 鼻や鼻のまわりが腫れている
  • 発熱がある など

 

まきの
まきの
くしゃみが数回あっても、そのあといつも通り落ち着いているようであれば生理現象と考えてよいでしょう。

 

生理現象でない猫のくしゃみの原因とは


生理現象でないくしゃみの場合に考えられる原因としては、以下のことが挙げられます。
 

ウイルス・細菌などによる感染症

感染することでくしゃみを引き起こすウイルスや細菌が多数あり、くしゃみ以外にあらわれる症状はそれぞれ異なります。
 

主なものとしては猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスといったウイルスや、Bordetella bronchisepticaやクラミジアといった細菌、クリプトコッカスといった真菌(カビ)が原因として挙げられます。俗にいう「猫風邪」もウイルスや細菌による感染症です。
 

初期の鼻水はサラサラしていますが、次第にねばついたり膿(うみ)が混じったりしてくることがあります。また、クリプトコッカス症は鼻が変形してしまうことがあります。
 

アレルギー性鼻炎

人と同じように、ハウスダストや花粉などに対してアレルギーを持っていると、くしゃみや鼻水などの症状がみられます。
 

アレルギーの場合は、ほかに皮膚炎や鼻づまりを起こすこともあり、放置すると重篤化するおそれもあるため注意が必要です。
 

その他の病気

  • 副鼻腔炎(ふくびくうえん)
    副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔に炎症を起こしている状態で、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状があります。
    副鼻腔炎が悪化し長引くと、膿がたまって蓄膿症になってしまう場合もあります。
  •  

  • 歯周病
    意外かもしれませんが、歯周病でもくしゃみを引き起こすことがあります。歯周病の原因は歯垢中の細菌によるもので、歯周炎を引き起こし重症化すると、上顎の歯の歯根の炎症が鼻の中に広がり、くしゃみや鼻血の原因になります。

 

まきの
まきの
ふだんから歯磨きの習慣がない子や、7歳以上の場合は注意しましょう。

 

  • ポリープ、腫瘍
    鼻の中にポリープや腫瘍(リンパ腫、腺癌)ができると、くしゃみをすることがあります。腫瘍から出血があるとピンク色の鼻水や鼻血が出ることもあり、さらに大きくなると鼻が腫れたり、顔が変形したりする場合もあります。
  •  

  • 高血圧
    高血圧が原因で鼻から出血することがあり、その刺激でくしゃみが出ることがあります。
  •  

  • ストレス
    環境の変化や季節の変わり目などストレスが多い状況になると免疫が弱まり、ウイルスや細菌による感染症を起こしやすくなります。鼻の粘膜に感染すると鼻炎を起こし、くしゃみや鼻水が出ます。

 

まきの
まきの
もともと猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスを持っている猫ちゃんは免疫力が弱く、感染症を繰り返し鼻炎になりやすいと言われているので、注意が必要です。

 

その他:異物や虫の吸引

猫は好奇心旺盛なので、気になったものに鼻先をくっつけ、それが細かいものだと吸い込んでしまう場合があります。そのため生理現象でくしゃみが出ますが、異物が詰まってしまって出てこない場合は病院で取ってもらうようにしましょう。
 

また、タバコの煙や香水なども刺激となりくしゃみの原因になります。
 

まきの
まきの
ペルシャ猫など鼻が短い猫の場合、鼻の穴の中も細くなっており粘膜が刺激を受けやすく、くしゃみが出やすい傾向にあります。

 

ちょっと寄り道:「猫風邪」は人間の風邪とは違います


「猫風邪」は、くしゃみや鼻水、発熱、食欲不振などといった人間の風邪に似た症状があることからそう呼ばれています。
前述のようにウイルスや細菌などに感染して発症しますが、一般的には「猫ヘルペスウイルス」「猫カリシウイルス」によるものが多くみられます。
 

ウイルスによる症状の違い

「猫ヘルペスウイルス」「猫カリシウイルス」が原因の場合、それぞれ次のような違いがみられます。
 

猫ヘルペスウイルス:猫ウイルス性鼻気管炎

目にも症状があらわれやすいことが特徴です。くしゃみや鼻水のほかに、結膜炎やそれによる眼脂、角膜潰瘍などを起こすことがあります。
 

また、一度感染してしまうと回復後も体内にウイルスが残るので、ストレスがあったり免疫が落ちたりしたときに再度症状があらわれる場合があり、生涯にわたって良くなったり悪くなったりを繰り返す可能性があります。
 

猫カリシウイルス:猫カリシウイルス感染症

口腔内にも症状があらわれやすいことが特徴です。くしゃみや発熱のほかに、口内炎や舌の潰瘍がみられることがあります。
 

また猫ヘルペスウイルス同様、体内にウイルスが残ってしまうため、元気になった後も再度症状が出ることがあります。さらに感染力も強いので、ほかの猫が近くにいる環境では特に気をつけましょう。
 

治療

残念ながらこれらのウイルスに対する特効薬はありません。症状に合わせて抗生物質やインターフェロンなどの投与を行います。
 

体力のある成猫であれば自然治癒することもありますが、子猫や高齢の猫の場合は重症化するおそれがあります。そのため、予防や早期発見・早期治療がカギとなります。気になる症状があれば早めに受診しましょう。
 

予防・対策

ワクチン接種が有効です。また、野良猫などから感染する可能性が高いため、外に出すことはオススメしません。
 

多頭飼いのお家の猫が猫風邪をひいてしまった場合は、1匹から感染が広がってしまう場合もあるので、獣医師の指示に従い他の猫とは一定期間隔離した方が良いでしょう。
 

まきの
まきの
ちなみに人間や犬には移りませんよ。猫同士は注意が必要です。

 

猫のくしゃみで鼻水や鼻血が出たら


そのままにしておくと猫にとって不快なだけでなく、固まってしまい鼻の穴を塞いでしまう事があるので、拭き取ってあげてください。
 

拭き取りかた

ティッシュなどでやさしく拭いてあげましょう。

  • 鼻水が固まっている場合・・・湿らせたコットン綿棒などでふやかしてからやさしく拭き取りましょう。無理やりこすり取るのはNGです。
  •  

  • 鼻血が出ている場合・・・血を拭き取ったら、猫を刺激しないように安静にさせましょう。

 

鼻をぶつけるなど外傷性の鼻血もあります。猫が興奮しないように落ち着いて対処してください。
 

また、病気によっては痛みがあり、鼻を触られるのを嫌がる場合もあります。嫌がり興奮してしまう場合は無理をせず、獣医師にお任せください。
 

こんなときは病院へ


一時的なくしゃみであれば問題ありませんが、そうでない場合は病気が隠れているおそれがあります。
 

「病気の可能性があるくしゃみ」でご紹介した症状がある場合は、早めに受診しましょう。
 

また、必ずしもくしゃみが出るわけではありませんが、呼吸するときにイビキのような音がする場合、鼻腔から咽頭、喉頭にかけて異物や腫瘤のある可能性もあるので、病院でよく相談してください。
 

まきの
まきの
今、食欲があっても鼻がつまってご飯の匂いが分からなくなると猫ちゃんは食欲がなくなってしまうので、気になる事があれば早めの来院をオススメします。

 

なお、病院へ行くときは以下に示す情報を伝えられるようにしておくと、くしゃみの原因を知る手掛かりになります。
 

  • いつから症状があるのか
  • 同じ症状が前にもあったか、初めてか
  • 急に始まったのか、徐々にひどくなってきているのか
  • 鼻水の色(透明、黄色、緑、ピンクなど)
  • 鼻水や鼻づまりがある場合、片方かあるいは両方からか
  • 猫ちゃんの周りで環境の変化があったか(外に出た、引っ越した、子猫がきたなど)

 

猫のくしゃみの予防・対策


くしゃみやくしゃみを伴う病気を防ぐために、できることがいくつかあります。
 

部屋をきれいにしておく

アレルギー症状につながるハウスダストや花粉、ダニを減らすためにも、こまめに掃除機をかけてきれいにしておきましょう。
猫が興味を持って鼻先をつけそうで細かいものは、うっかり吸い込んでしまわないようにフタをするなどしてしっかり管理してください。
 

乾燥しているときは部屋の保湿を

空気が乾燥していると、ウイルスが繁殖しやすくなり感染症のリスクが高くなってしまいます。冬場など、乾燥しているなと感じたら加湿器などで適度に保湿しましょう。
 

ブラッシングをする

猫の毛にほこりやダニがついていると、毛づくろいしたときなどに一緒に体内に入って、アレルギーの原因になってしまう場合があります。それを防ぐためにも、こまめにブラッシングしてきれいにしてあげるのも有効です。
 

室内飼いにする

ほかの猫と接触することで感染症にかかってしまう可能性が高くなるため、屋外には出さず完全室内飼いにすることをオススメします。多頭飼いの猫で感染症が疑われた場合、ほかの猫にうつさないために隔離するようにしましょう。
 

感染症予防にはワクチン接種

子猫のうちから混合ワクチンを接種することで、感染症を予防することができます。屋外に出る猫はもちろんのこと、完全に室内で飼っている猫でも定期的な接種が望ましいです。
 

まきの
まきの
ちょっとした異変にも気づきやすいよう、定期的な健康診断で健康状態を把握しておきましょう。

 

猫がくしゃみをしていたら意識して観察を

ふだん頻繁にするものではないので、くしゃみをしていたら気づかれる方も多いのではないでしょうか。
 

くしゃみには思いがけない病気が隠れている場合もあります。
 

「ちょっと回数が多いな」「昨日からくしゃみが続いてるな」「様子がいつもと違う気がする」など気になることがあったら、早めに病院へ連れて行ってあげてくださいね。
 

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